資源小国ポルトガル、再生可能エネルギーで大奮闘

永井 潤子 / 2018年4月8日

化石燃料資源を持たない資源小国のポルトガルは、長年、輸入エネルギーによる大幅な貿易赤字に悩まされてきた。しかし、ポルトガルはヨーロッパの中でももっとも太陽に恵まれた国であり、水源も豊富で、海岸線も長く、オフショア風力発電にも適している。そうした自然の好条件に着目したポルトガル政府は、イベリア半島最大のオフショア風力発電所を作るなど、10年近く前から多様な再生可能エネルギーの推進プロジェクトを強力に押し進めてきた。その結果、早くも今年3月には、1ヶ月分の電力の総需要の100%以上の電力を再生エネルギーによって生産することができたという。

ポルトガルの送電網運営会社RENの発表によると、今年3月、1ヵ月分のポルトガルの再生可能エネルギーによる電力の生産量は4812GWhで、4647GWhの総電力需要をうわまわったという。つまり総電力需要の103.6 % が再生エネルギーによって作られことになる。そのうち水力が55%も占めたという。ポルトガルはすでに2014年2月に総電力需要の99.2%を再生可能エネルギーによって生産して注目を浴び、2016年には4日間連続で電力需要の全てを再生可能エネルギーでまかなうという記録を樹立している。

ポルトガル再生可能エネルギー連盟(ARPEN)と持続可能エネルギーを推進するNGO「ZERO」は、3月に総電力需要の100%以上を再生可能エネルギーで生産することができたことは、1800万トンの二酸化炭素削減に相当し、それによって2000万ユーロ(約26億円)以上の節約ができたと試算している。そして、ポルトガルの電力の平均価格は、再生可能エネルギーの増加によって、昨年、1MWhあたり43.94ユーロ(約5712.2円)から39.75ユーロ(約5169.5円)に下がったと見ている。

緑の党に属する欧州議会議員、クロード・トゥルメ氏(ルクセンブルク)は「ポルトガルの進歩に感動した」と述べて、ポルトガル政府の努力を称えた。同議員は同時に、再生可能エネルギーが予想以上のテンポで増えている現実を踏まえて「欧州連合(EU)は、目下論議されている2030年のエネルギーミックスに占める再生可能エネルギーの割合について、もっと野心的な目標をかかげるべきである」とも語った。現在欧州議会、EU委員会、それにEU加盟国政府の間で、2030年のエネルギーミックスに占める再生可能エネルギーの割合を巡って交渉が行われており、欧州議会が35%を目標にするよう要求しているのに対し、EU委員会と加盟28カ国の政府は、それより8ポイントも低い27%を主張して対立しているという事情が、この発言の背景にはある。

ポルトガル政府の脱化石燃料に向けての努力、再生可能エネルギー推進政策は、今後ますます成果をあげるように思えるが、それに伴う問題も少なくない。まず、再生エネルギーは自然条件に左右され、太陽が照らないこともあれば、風がまったく吹かないこともある。事実この3月にも総電力需要の100%以上を再生可能エネルギーで生産したものの、風が吹かず火力発電に頼らなければならなかった日があったという。逆に3月11日には太陽がさんさんと照り、風も吹いたので、再生可能エネルギーによる発電は、この日の需要の143%にものぼった。しかし、余剰電力を蓄える蓄電技術はまだ十分ではないし、余った電力を他国に譲る送電網もスペイン以外にはない。ドイツなどヨーロッパの中心部にある国は近隣諸国と送電網がつながっているため、電力を譲り合うことができるが、ポルトガルの事情は全く違う。ポルトガルはヨーロッパ大陸の端のイベリア半島の、さらに西側の1番端っこに位置している。

ポルトガルのコスタ首相は昨年12月、スペインのラホイ首相と、隣国同士電力を譲り合える新しい送電網の建設などについて話し合う「エネルギー会議」を開催すると発表した。この会議にはフランスのマクロン大統領やEUのユンカー委員長も出席すると発表されているが、まだ具体的な会議の日取りは決まっていない。

資源小国ポルトガルの再生可能エネルギー推進に向けての努力は、同じ資源小国の日本にも参考になるのではないだろうか。

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