なるか仏フェッセンハイム原発の廃炉

ツェルディック 野尻紘子 / 2018年3月25日

フランスのニコラ・ユロ環境相はこのほど、フランスの有力紙「フィガロ」とのインタヴューで、ドイツの国境から遠くないフェッセンハイムにあるフランス最古の原発の廃炉に関し、「4月中にも廃炉の予定表を発表する」と語った。この発言は、これまで同氏が語っていたことより大きく前進した内容で、関係者の注目を集めている。フランスで原発支持者が減ってきていることも、この発言の背景にいくらかあるようだ。

ユロ環境相は昨年5月の就任直後に、「フランスの電力生産における原発への依存率を、2025年までに75%から50%に減らすという前オランド政権の政策を踏襲する」と発言していた。しかし11月に「原発をそれほど急速に廃炉にした場合には、新たにガス発電所をつくる必要が生まれ、そうすると温暖化ガスの削減目標が達成できなくなるので、2025年より遅らせる」と語り、環境保護団体などから強く批判され、同氏の発言の信憑生が疑われていた。

ユロ環境相は インタヴューで、「フェッセンハイムの廃炉は、もはや後戻りすることのできない課題である 」と述べた。そして昨年11月の発言に関しては、前政権の怠慢を指したものだと説明し、「焦りすぎてド、イツのように石炭火力発電に頼らなければならなくなることは避けたい」と、ドイツの政策も批判した。また、フランスの再生可能電力が全発電量に占める割合の低いことも指摘した。フランスの再生可能電力は、2005年の9%から2015年にやっと16%に達したところだ。原発への依存度を2025年までに50%に下げるためには、2020年の再生可能電力の割合が、少なくとも23%になっていることが前提だと言われている。しかしそれは、達成不可能だと判断したそうだ。「廃炉はドイツとも相談しながら進める」と環境相は語り、「近々フェッセンハイム原発を訪問する」とも付け加えた。

1977年に稼働を開始したフェッセンハイム原発は、40年間発電を続けている。これまでに何度も大小の事故を起こしており、フランスやドイツ、そしてスイスの環境保護団体、またドイツ政府も、同原発を「古くて危険だ」として、1日も早く停止するよう要求してきた。しかし、フェッセンハイムの住民の大半は停止に反対だという。理由は、フェッセンハイムの税収入の80%が原発関連だからで、同市のブレンダー市長は、「原発に代わる産業が開発されるまで、少なくとも2021年までは稼働を続けて欲しい」と要求しているようだ。

しかし、フランス全国の住民の意見は数年前から変化してきている。1000人のフランス人を対象にハリス・インターアクティヴ研究所が昨年11月に行ったオンラインの世論調査では、解答者の74%が「フランスのエネルギー政策は、原発に依存しすぎる」と答えている。また、このほど行われた同研究所の調査でも、83%が「原発への投資より、再生可能エネルギーへの投資を望む」と回答している。ユロ環境相は「フランス人の原発に対する気持ちは変わってきている。そしてごく一部の人たちを除いて、皆は、化石燃料からも脱出したいと思っている」と話す。

フランスでは現在58基の原発が稼働しているが、大半が古く、その内の少なくとも10基は非常に危険な状態にあると言われる。「原発事故が起きるか」が問題なのではなく、「いつ起きるか」が問題なのだという意見もある。フェッセンハイムの停止は早くて2018年末、しかし多分2019年にずれ込 むだろうという見方が有力だ。

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