ドイツ産業連盟、2050年までに二酸化炭素80%削減は可能

こちゃん / 2018年2月4日

2015年の国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP 21)で決まった「パリ協定」を受けて、ドイツ政府が2016年に決定したドイツの「気候保護計画2050年」には、実現性があるだろうか。どうすればその目標は達成できるだろうか。ドイツ産業連盟(BDI)はこのほど、その実現性を探る「ドイツの気候改善への道のり」と題する研究報告を 発表した。それによると、2050年までに二酸化炭素の排出量を1990年比で95%削減するというドイツ政府の掲げる野心的な目標の上限を達成することは幻想に等しい。しかし下限の80%達成は技術的に可能だし、経済的にも消化できるという。

「この研究報告の重要なメッセージは、ドイツは、2050年までに二酸化炭素の排出量を大幅に削減することが技術的に可能であるだけでなく、その際、ドイツの産業が害を受けることもないということだ」と語るのはディーター・ケンプ独産業連盟会長だ。セメント業界、アルミニウム業界、製紙業界など、生産に多量の安価なエネルギーを必要とする産業分野と、エネルギー転換で大きな利益を上げることが予想される電気業界や機械業界が、意見の一致に達するのは難しかった。そのため、この研究に参加した68の業界団体や企業の間では、度重なる話合いが欠かせなかった。延べ200人が関わったという。 300ページの報告書をまとめたのは、経営コンサルタント大手のボストンコンサルティングとスイスの著名なコンサルティング会社プログノスで、作成には10ヶ月もかけている。

「採算が合わなければ二酸化炭素削減は進まない」とケンプ会長は強調する。事業に支障が出るならば、産業界は付いてこないというのだ。報告書の計算の基礎となったのは現在までに開発されている技術で、二酸化炭素の排出量を1990年に比べて80%削減しようと努力する場合には、約1兆5000億ユーロ(約204兆円)の投資が必要になる。ただ、その投資が行われた場合には、効率が上昇し、燃料購入のためにかかる費用などが徐々に減るので、その分を差し引くと、実際にかかる費用は4700億ユーロ(約63兆9200億円)にとどまる。そうなると、年間の投資費は約150億 ユーロ(2兆0400億円)になり、これならばドイツの産業界が負担できる額だという。

報告書はまず、エネルギー転換とは、再生可能電力への転換だけを意味するのではないとする。すなわち、生産の課程や農業、交通の分野で効率を高めることや、建物の省エネを進めることもそれに含まれる。具体的には再生可能エネルギーの発電規模を現在の約2倍の240GWに増やすことや、石炭火力発電を徐々にガス火力発電に交換することを提案している。この点は、再生可能電力の100%導入を考えている政府の「気候保護計画2050年」とは異なる。建物のエネルギー効率の50%上昇、約1000万台のヒートポンプ設置なども案に入っている。交通面では車の3分の2 − これは約2600万台に相当する − を電力駆動にする。現在ドイツにある1万3000 kmのアウトバーンの3分1に当たる4000 kmに、トロリーバス用のような架空線を電気トラック用に引くことなども考えられている。燃料電池や二酸化炭素を利用した人工燃料の生産や炭素補足(CCS)も、二酸化炭素削減に役立てる。

これらの投資はドイツ産業全体にとってはプラスになるが、個人や個々の企業には負担が大きい。従って、国は広範囲の助成金などを準備する必要がある。しかしその際に重要なのは、国が企業に選択の自由を与えることで、電気自動車のクオータ制、ガソリン車やディーゼル車の禁止など、特定の技術を指定したり計画経済的な規制をしたりしないことだ。また 、高いエネルギー価格に対しては、企業に融通を図る必要もある。そうでなければ、外国企業との激しい競争に立たされている企業は、生産拠点を国外に移転してしまうだろう。

ドイツ産業連盟のケンプ会長は、「環境に優しい生産工程や製品の市場が世界規模で拡大する中で、持続的な環境保護を考慮した経済活動は、ドイツ企業が長期的に有利な立場に立つことを可能にする。さらにそれは、ドイツ経済の革新に貢献する」と述べ、「しかし、そうした経済活動を実行に移すことは、企業に任されるべきである」と繰り返す。

ドイツ産業連盟のこの報告書「ドイツの気候改善への道のり」について、ベルリンの日刊紙「ターゲスシュピーゲル」は以下のように褒めている。

ドイツでは、産業界を敵に回してしまうと、事が進まなくなる。ドイツ産業連盟が二酸化炭素削減は可能で、ドイツ産業にとり有利だと認めたことは、画期的なことだと言える。この事実は、政府の決定する計画や目標よりずっと大きな重みを持ち、かつ持続的に効果を生む。『気候保護のために非工業化が始まる』とか、『エネルギー転換のもたらす危険』 などを語る人たちは、進歩についていけない時代遅れの人たちだ。ドイツ産業界は、気候保護とエネルギー転換の両者を望んでいることがはっきりした。時として批判的な異議を申し立てることがあるとしても、その実現に建設的に参加するだろう。気候保護は、新しい年の初めに、力強い担い手を得た。

ドイツ連邦経済・エネルギー省や、産業界には普段批判的な環境保護団体のジャーマンウォッチ 、グリーンピースなども、この報告書を好意的に受け止めている。

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