2017年新年の挨拶

永井 潤子 / 2017年1月1日

Photo by Sachiko Aoki

皆さま、新年おめでとうございます。2017年が皆さまにとって喜びに満ちた良い年になりますよう、お祈りいたします。

正直言って今年ほど「おめでとう」の言葉が出にくいお正月はありません。ベルリンは、クリスマス市でのテロの衝撃が消え去らないなかで、新しい年を迎えました。首都の中心部で、しかもクリスマスの到来を待ち望む人たちが楽しむクリスマス市でイスラム過激派のテロが起こり、多数の死傷者が出たことで、ドイツ、特にベルリンに暮らす私たちは大きなショックを受けました。一時は恐怖と不安に襲われました。特に広島の原爆ドームのように、第二次世界大戦中に空爆を受け、壊れた塔を戦争への警告碑としてそのまま残したカイザー・ヴィルヘルム記念教会の隣のクリスマス市がテロの現場になったことに、象徴的な意味、“平和への挑戦“を感じる人も少なくありませんでした。しかし、この事件に対するドイツ社会の反応が比較的冷静だったことに、救われる思いをしたのも事実です。

この記念教会で行われた事件の犠牲者の追悼式典には、ガウク大統領やメルケル首相などの政治家をはじめ、ドイツのイスラム教徒代表やユダヤ教会代表など、各界代表がその立場を越えて参加し、テロに反対する共通の意思と連帯を示し、人間性に対する信頼と寛容な精神を失ってはならないというメッセージを強調しました。また、ガウク大統領がクリスマスの挨拶で指摘したように、ドイツ国民やドイツで暮らす外国人の多くも、こうした暴力と破壊の横行する時代だからこそ、平和への願いを一段と強め、そのために一人一人が社会の安全と平和のために何ができるかを考えるきっかけにしたと言えるのではないでしょうか。

過ぎ去った2016年は国際社会での混乱と危機が深まった年でした。シリアのアレッポの住民たちの悲惨な状況に対して、国際社会が効果的に対応できない無力感は極めて深刻でした。また、2017年は、ドイツ、ヨーロッパにとっても歴史的な分岐点になる年かもしれません。イギリスのEUからの脱退、アメリカでのトランプ政権誕生がヨーロッパ各国の排他的な右翼ポピュリズム勢力に大きな影響を与えるとしたら、EUの存続が危ぶまれる事態になるかもしれません。オランダ、フランス、それに秋にドイツで行われる総選挙が、その鍵を握ることになるでしょう。そうした波乱に満ちたヨーロッパの政治情勢、そして脱原発決定から6年目を迎えるドイツのエネルギー転換の様子を、ベルリンに住む私たちの目を通して今後もお伝えするつもりです。今年もどうぞよろしくお願いいたします。                            緑の魔女一同。

One Response to 2017年新年の挨拶

  1. 折原(埼玉県) says:

    寒中お見舞い申し上げます
     公私とも、いろいろありまして、貴サイトも目を通す余裕もありませんでした。恐縮ながら、新年のご挨拶も、今開いたところです。

     私にとって、旧年でよかったことは、20年前に新潟県巻町で、1969年に原発建設計画がスクープされてから、住民の反対運動を経て、住民投票の結果で、建設が葬られたことを再確認したことでした。20周年の記念シンポジウムが開かれて参加し、当時のさまざまな方々の話を聞くことができました。

     民主主義と地方自治、そして放射能の危険から命を守るための、市民のしなやかで粘り強い闘いに圧倒され、感動させられました。その方々の発言と10冊ほどの書籍、資料を加え、ドキュメンタリー「原発を葬った市民のスクラム-巻町住民投票をめぐって」として同人誌に掲載しました。
     日本で、原発建設計画が立てられながら、住民の反対運動で白紙撤回させた地が35カ所あったことも分かりました。
     これらのことは、私たちのいく先に光をあててくれるものとして、今後に生かしていきたいと思っています。

     2017年の懸念、共有しております。
    今年も、皆さま、どうぞよろしくお願いいたします。