「ドイツ統一の日」の式典を前に起こった襲撃事件

じゅん / 2016年10月2日

10月3日の「ドイツ統一の日」を前にした9月26日の夕方、東部ドイツ、ザクセン州の州都ドレスデンで、外国人排斥の右翼過激派の仕業とみられる爆破事件が2件起こった。襲撃事件の対象になったのは、イスラームのモスクと国際会議センターだった。幸い死傷者は出なかったものの、ドレスデンでは10月3日に「ドイツ統一の日」の中央記念式典が行われるため、衝撃が広がっている。

モスクの建物にはイマーム(イスラームの宗教指導者)が家族とともに住んでおり、爆発物が投げられた時には子ども二人を含めた家族が在宅中だった。それからしばらくして国際会議センターで爆破事件が起こり、いずれも建物にかなりの被害が出た。「ドイツ統一の日」の中央記念式典には、ガウク大統領をはじめ、メルケル首相ら政府要人も多数出席する予定だ。

ドイツでは1990年の東西ドイツ統一以来、統一の日の中央記念式典は、その年の連邦参議院の議長州の州都で持ち回りで開かれることになっている。今年はザクセン州がその番にあたり、同州が右翼過激派の牙城であるというイメージを払拭するべく、さまざまなプロジェクトが計画されてきた。その一つが自由と寛容、連帯をイメージする「100のハート作戦」で、100個の大きなハート型のオブジェ(高さ1、3メートル)に100人の人が思い思いの言葉を書いたり絵を描いたりして、外国人への寛容と連帯を呼びかけるというものだった。その矢先にドレスデンで、こうした事件が起こってしまったのだった。その後、ソーシャルメディアに犯行を認める声明を出したグループがあったが、警察によると、それは左翼を騙った偽のものであることが判明したという。

この事件に先立ち連邦政府の「統一ドイツに関する年次報告」でも、「東部地域での右翼過激派の台頭は、深刻な脅威になりつつある」という指摘がなされていた。連邦政府の東部ドイツ問題担当顧問のイリス・グライケ氏(社会民主党の連邦議会議員、東部テューリンゲン州出身)は、先ごろ、今年の年次報告を発表した際、特に東部ドイツでの外国人への憎悪が増大する傾向に連邦政府は懸念を抱いているなどと語った。「東部ドイツでの外国人排斥の風潮、右翼過激派の台頭、非寛容の雰囲気は、社会にとって極めて危険であるだけでなく、今後の経済的な影響も心配される」とも指摘した。

2016年の年次報告の要点を以下に紹介する。

統一後26年経って、かつての東独市民の生活環境は著しく好転した。個人の生活水準が向上しただけではなく、都市や公共のインフラの整備も進んだ。教育水準は東の方が西より高いという状況が生まれている。東部ドイツでは就業者の33%が大学卒だが、西部ドイツでは29%に過ぎない。東部の若者や資格を持つ優秀な人の西部ドイツや外国への移住の動きは、最近減少している。しかし、経済力という点では依然として東西間に大きな差が存在する。

一人当たりの国民総生産を比較すると、1991年には東部ドイツのそれは西部ドイツの42.8 %に過ぎなかったが、2015年には72.5 %に達した。また東部ドイツの労働者の平均賃金は同年西部の97 %に達した。しかし、東部ドイツの失業率は、現在9.2 %で、西部の失業率を3.5 %上回っている。東部ドイツ一人当たりの経済力は、今なお西部市民より27.5 %低い。東側が西の水準に追いつく速度は最近落ち込んでおり、こうした経済格差は、当分なくならない見通しである。

グライケ氏は、東西の経済格差がなくならない一つの理由として、西側の大企業のほとんどが拠点を東に移していないことをあげた。今年の年次報告の特徴は、東部地域が直面する問題として、生活水準や経済状態などと並んで「右翼過激派と外国人排斥」という一項目が設けられたことだった。

2015年の東部地域での右翼過激派による犯罪件数は、過去最大を記録した。憲法擁護庁の統計によると、人口100万人あたりの右翼過激派や外国人排斥関連の犯罪件数が多かったのは東部5州で、その中でもメクレンブルク・フォアポンメルン州は、58.7件と最も多かった。二番目に多いブランデンブルク州では51.9件で、三番目のザクセン州では49.6件となっている。西側各州での平均は、10.5件だった。

この数値を発表したグライケ氏は、一方的な印象を与えるのを避けるよう努め、次のように強調していた。

東部ドイツでも西部と同じように難民支援活動に尽力している人は大勢いる。また、東部ドイツ市民の大多数は、外国人排斥者でもネオナチでもない。しかしそうした人たちの姿は、ネオナチなどの外国人排斥の犯罪の陰に隠れて目立たなくなってしまっている。そういう大多数の良識派の市民が、その態度をもっとはっきり示すことが望まれる。世界に開かれた地域のみが経済的にも明るい展望を持つことができるからである。

今年の「統一ドイツに関する年次報告」は、先ごろ閣議で了承された後、連邦議会でも議論されたが、東部ドイツのみの極右や外国人排斥問題を取り上げたことに、批判があった。

ドレスデンでは、10月3日の記念式典に先立って、統一を祝う「市民のお祭り」がすでに1日から始まっている。そのモットーは「ともに祝い、お互いに祝い、人々の間に橋をかけよう」というものだ。市の中心部には、ドイツ16州のテントが設けられ、各州の情報や特産品を手に入れることができるだけではなく、各地のビールやワイン、あるいは土地名物のお料理を楽しむこともできる。それ以外にもさまざまな文化的な催し物が行われ、地元のムスリムの人たちも「市民のお祭り」に協力しているという。訪れる人は毎日25万人にのぼると予測されるが、左翼と右翼双方のデモも計画されているため、先の爆破事件以降、警戒態勢が一層強化された。

ドレスデンやライプチヒなどザクセン州の人たちは「旧東ドイツの『平和革命』はザクセンから始まり、それが統一への道を開いた」と誇りに思っている。誇り高きザクセン州の州都での統一を祝う「市民のお祭り」が、外国人、東西ドイツ人を問わず、すべての人の楽しいお祭りになるよう、そしてテロ事件が起こらず、無事に終わるよう、切望する。

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