儲からなくても止められない火力発電所

こちゃん / 2014年11月16日

ドイツのあちこちの電力会社が火力発電を止めようとしている。儲からないからだ。赤字のところもある。理由は、風力や太陽光発電の増加で電力が市場に溢れ、電力の卸売り価格が、ドイツが脱原発を決めた2011年以来、半額以下になってしまったためだ。しかし全国の停止申請中の発電所が全て止まってしまうと、電力の安定供給に問題が発生することになる。そこで、当局から発電停止を拒まれた電力企業が今、発電能力維持の条件を国と交渉している。

ドイツ連邦ネット・エージェンシーによると、現在同エージェンシーに運転停止の申請が出ている発電所の数は48もある。石炭と石油を燃やす発電所がその内の半分で、残り半分はガス火力発電所だ。目下、ドイツの送電網運転会社4社と共同で、どの発電所を電力の安全供給のために残さなくてはいけないか、どの発電所は停止しても差し支えないかを検討している最中だとういう。既に申請を却下された発電所は9カ所になる。2カ所に関しては現在まだ検討中だという。その他の発電所は古かったり小規模だったりするので、停止されても問題が出ないようだ。エージェンシーのヨッヘン・ホーマン会長は「将来原子力発電が徐々に停止されていく際に、従来型の発電能力をどれだけ残しておく必要があるかということを今決めなくてはならないのは、大変難しい仕事だ」と語る。

ドイツの西南部、バーデン・ヴュルテンベルグ州にあるドイツの4大電力企業の一つに当たるENBWは、古い発電所を含む6カ所の発電所の停止を2013年に申請したが、全てが拒まれた。従ってこれらの発電所は、実際に発電するかしないか、またどれだけの量を発電するかに関わらず、つまり採算が合っても合わなくても、常時発電可能な状態に維持しておかなければならない。 この地方には大量の電力を必要とする工業が集中しており、また2022年までに停止されてしまう原子力発電所の数も多いからだ。全ての原子力発電所が停止するまでには、ドイツ北部で多量に発電される自然エネルギーを南部ドイツに運ぶ送電網幹線が完成するはずだが、それでも電力の安全供給のためには充分な余裕を残す必要がある。

ENBWは発電所を止めない代わりに、発電所維持の対価に相応する賠償金を要求しており、そのことに関してネット・エージェンシーと数ヶ月前から交渉を始めている。話し合いは進んでいるが合意はまだ得られていないという。難しいのは何を賠償させるかだ。テーマに上がっているのは発電所維持の経費、発電所に投入されているために他の目的に活用できない資金の利子、上がらない企業利益だという。同社は、合意が得られない場合には、同社にどれだけの請求権があるかを裁判ではっきりさせたいと主張している。

同社がネット・エージェンシーとどのような合意に達するかは、業界で大きく注目されている。同社以外にこれほど多数の停止を申請した会社はなく、電力の安全供給のために欠かせないとして申請が取り下げられた9カ所の発電所のうち6カ所が同社のものだからだ。

なおドイツでは、上のように国が企業の運営に関与することは市場経済の原理に背き、計画経済の範疇に入るとする批判がある。そしてあちこちから、一日も早く市場経済の法則に則った新しい電力市場が形成されるべきだとの声が上がっている。政府や電力問題を扱う研究所などは現在、そのための案を急ピッチで練っている。

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