独企業への賦課金支払い免除、これからも続く

ツェルディック 野尻紘子 / 2014年3月23日

電力消費量の多い企業に対する再生可能電力促進のための賦課金の支払い免除がなくなることを、ドイツの産業界が恐れていたが、免除はこれからも続くようだ。このほど明らかになったEUの「再生可能電力促進のための補助に関する新しい指針案」により、EUが免除に全面的には反対しないことが判明したのだ。ドイツの産業界が胸を撫で下ろしている。

ドイツでは電力消費量が非常に多く、しかも国外企業と競争する立場にある企業に対し、再生可能エネルギー優先法(略称 :再生可能エネルギー法、EEG)で取り決められた再生可能電力促進のための賦課金の大部分を免除している。例えば、賦課金を免除されている企業の数は2014年には2098社(事業所数では2779 )になった。2013年に賦課金が加算されなかった電力の規模は約160TWh、免除された金額は50億ユーロ強(約7,000億円)だったといわれる。

EUはこの免除を、国外企業との競争を歪める国内企業に対する不正な補助政策だとして、昨年暮れに「補助に対する訴訟手続き」を開始したばかりだった。特に問題視されていたのは免除が適用される業界の範囲が広いこと、企業数の多いことなどだった。しかし今回のEUの指針で免除が享受出来る業種は以外に多く65もある。アルミや鉄鋼などの金属業、化学業はこれからも免除の対象になるだろうと予想されていたが、実際にはセメント業、製紙業の他に、窯業、工業用ガス、プラスチック製品、ガラス繊維、果実ジュースメーカーなども含まれる。

ただ、EUは企業が賦課金を払わないこと、つまり再生可能電力の促進に貢献しないことは根本的には避けるべきだとし、少なくとも消費電力の20%に対しては賦課金を含む通常の電気料金を支払うべきだと指針に盛り込んでいる。しかしその反面、賦課金が現在1kWh当たり6.24ユーロセント(約8.7円)と相当高くなっていることを考慮して、例外も認める方針だ。企業・事業所の 利潤高、あるいは電力消費量が生産に占める割合などに応じて、かなりの免除が可能になるようだ。

この企業に対する賦課金の支払い免除に関して、産業界と近い関係にある在ケルンのドイツ経済研究所(IW)は、「免除がなくなると、企業は現在すでに始まっている国内投資の減少を加速させる。企業はまず研究費をカットするので、技術革新が滞る。投資は国外で行うようになり、国内の職場は失われ、産業の空洞化が顕著化する」と警鐘を鳴らしていた。「企業の賦課金免除のために一般家庭の支払う電気料金が高騰しているとよく言われるが、たとえ電力消費量の多い企業が賦課金を全額支払ったとしても、一般家庭への軽減は僅か月60ユーロセント(約84円)にしかならない。そのために企業が国外に流出し、この国の産業基盤が損なわれることは大きな問題だ」と分析していた。

ガブリエル経済・エネルギー相は、EUの「補助に対する訴訟手続き」に対し「賦課金支払いの免除は、 欧州内の 競争力を持つ強力な産業基盤の維持と環境・気候保護を一致させ、将来的にも経済成長を可能にする目的のためにある。この目的を達成するための代替策はない」と反論していた。「他の欧州諸国を上回る賦課金によってドイツ企業は極端な負担を強いられている。支払い免除は、その負担をいくらかでも軽減するための試みだ。ドイツは再生可能エネルギーの拡充のために10億ユーロ単位の投資を長期にわたって重ねてきた。その結果、欧州諸国は現在、原発や火力発電と競争できるまでに発展した再生可能エネルギー技術の恩恵を受けている」と正当性を理由付けていた。

このEU指針は4月初めに決定され7月から施行される。

 

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