「日本は脱原発を成し遂げる - 取り戻した日本への希望」コッティング=ウール議員インタビュー

あきこ / 2014年2月9日
インタビューに応じるコッティング=ウール議員

インタビューに応じるコッティング=ウール議員

去年12月、福島事故後4度目の訪日を果たした緑の党の連邦議会議員コッティング=ウールさんは、1月13日、新政権が誕生した後の最初の議会が始まる前に、私たちのインタビューに応じた。議員会館内にある議員の事務所の壁一面に、日本から持ち帰った「ようこそコッティング=ウール議員」と日本語で書かれた横断幕がかかっている。多忙なスケジュールにもかかわらず、同議員は私たちの質問に丁寧に答えてくれた。

インタビューの始まり、やや緊張している4人の「魔女」に対して、コッティング=ウール議員から「みどりの1kWh」とはどういうグループなのかという質問があった。福島の大事故を契機にして、ベルリンから日本に向けて情報を発信したいという女性たちが自発的に集まったと答えたところ、「チェルノブイリ事故後にドイツでも女性たちが各地で自発的に集まり、反原発運動を加速させることになった。女性たちの力が社会を動かす力になることは私たちも実感している」というコメントで緊張が解けた。以下、インタビューに応じた同議員の発言の要旨をまとめてみよう。

4号機の燃料棒取り出しが開始されること、小泉元首相が脱原発を明らかにしたことの2つが訪日を決意させるきっかけだった。今までにはないこの2つの新しいニュースが、日本にどのような意味を持つのかを実際に確かめたかった。小泉氏については様々な評価があるだろう。しかし、一つの大きなうねりを作り出すというときには、彼のような人物が必要だ。とくに安倍首相の師匠である小泉氏が脱原発を表明しているということは重要なことだ。2012年の衆議院選挙で自民党が圧勝したとき、福島の事故は日本にとって何だったのかを考えて本当に落胆した。日本に行く気持ちを失っていたが、小泉氏の発言は私の考えを変えた。ドイツの連邦議会選挙後、政権が誕生するまでに時間がかかったことも今回の訪日にはプラスに働いた。準備から実行までたっぷり時間ができたからだ。

さらに2つのことを付け加えておくと、10月ごろから準備を始めたのだが、ずっと前から希望していた福島第一原子力発電所の訪問が実現したこと、そして先ほど女性の力と言ったけれども、日本の女性議員に対して反原発の力をまとめるように働きかけたかったことだ。残念ながら、女性議員への働きかけは実現しなかった。

福島第一の訪問が実現しなかった場合の代替案として、富岡町を訪問することにしていた。ドイツ連邦政府諮問機関「安全なエネルギー供給に関する倫理委員会」のメンバーだったベルリン自由大学ミランダ・シュラーズ教授の仲介によって、法政大学のシンポジウムに参加して、富岡町に行くことができた。最終的には福島第一の訪問も実現した。当初、東電からは訪問拒否の返事が来たが、ドイツ大使館の協力で実現した。東電を訪問するに当たって、質問票への記入を要求された。原子力発電所についての私の考え、事故後の東電の対応についてどう考えるかという質問だった。それ以外の条件はなかったが、訪問を終えたあとには私が受けた印象についてかなり詳しく東電からの質問があった。

今回の訪問は、私にとって非常に意義深いものとなった。それは、日本に落胆していた私が再び日本に希望を見出すことになったからである。福島第一原子力発電所で確認したのは、今できることに最大の努力が、最大の緻密さで行われていることだった。福島の事故がどのように克服できるのか、どこの原発もどこの国もまだ経験したことがないような大事故の収束に対して、できることからやるしかないということだ。未だに解決されていない問題は山積していることは明らかである。しかし、現場で働いている東電社員の真摯な努力は印象的だった。ただ、作業員の線量コントロールについて、独立の第三者の検査機関が必要である。

ドイツ大使館が設定したNGOの人たちとの会合でも、脱原発に向けての熱心な活動が行われていることを実感した。今回の訪問では私が質問するよりも、彼らからドイツの状況への質問のほうが多かった。これだけのNGOの活動がありながら、そして多くの人々が脱原発を望んでいるという事実がありながら、なぜ脱原発に向けてのネットワークができないのだろうか。ドイツでもいくつもの小さなグループが活動を続け、ネットワークができるまでに相当長い時間がかかったという事実があり、ネットワーク化が一朝一夕にできるものではないが、誰かが中心人物となる必要があるだろう。私は菅直人元首相にこのような役割を期待しているのだが。

ドイツでは大連立政権が誕生し、緑の党は再び少数野党に戻ったが、今後どのように脱原発実現に向けて戦うのかと尋ねた。同議員は次のように答えた。

経済省・エネルギー省が大連立政権で一つの省になり、ガブリエル社会民主党(SPD)党首がこの省を率いることになったことについて、今の段階で良いか悪いかを言うことはできない。ただ、SPDは石炭による火力発電を重視しており、この点をきっちりと批判していかなければならない。現時点(1月中旬時点)での情報では、ガブリエル氏の再生可能エネルギー計画では、ドイツの原子力発電所が予定通り廃炉になったときに、石炭に頼ってしまう結果になる恐れがある。褐炭に対する市民の強い反対の声をバックに、原子炉の廃炉延期という事態が絶対に起こらないとは言えない。そのためにも、緑の党としては今後の大連立政権の動きを見ながら、再生可能エネルギーをもっと強く推すための方策を主張しなければならない。さらに核廃棄物の処理施設についても、早期解決を目指す努力をしなければならない。

今後、ドイツと日本の間で具体的に脱原発に向けてどのような活動をする予定かという質問に対する同議員の答えは次のようであった。

ヴッパータール気候環境エネルギー研究所のペーター・ヘニッケ教授とともに、脱原発を推進するため日本とドイツの学者と政治家による30~40名のグループを結成し、互いに学びあうための定期的な交流を実施する。7月上旬横浜で「世界社会学会議」が開かれるが、その会議の前に社会学と脱原発をテーマにした会議が開かれる予定で、私はその会議に参加する。

2012年の衆議院選挙以後日本の状況に落胆していたコッティング=ウール議員は、今回の訪日で希望の印を確認して、また日本の問題と積極的に取り組むという気持ちになったという。インタビューを終えて、私たちも元気をもらったような気がした。脱原発への道は果てしなく長く、終わりは見えない。だからこそ落胆、失望ばかりしていられない。今できることを積み重ねていくしかないのだ。

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