電力会社からのクリスマスプレゼント

あきこ / 2013年12月22日

日本の大手メディアには、「ドイツのエネルギー転換は進まない」、「電気代の値上げで電気代を払えなくなる人がいる」などなど、ドイツの脱原発に対する批判的な報道が見受けられる。たしかに、ドイツの新聞でも電気代の高騰についてはよくニュースになっている。しかし、その根底には電気がぜいたく品にならないための議論を喚起しようとする意図がある。決して原発回帰を推進するための報道ではない。

 

ドイツでは1998年、エネルギー事業法(Energiewirtschaftsgesetz)に基づき電力が自由化された。その結果、消費者は自由に電力供給会社を選ぶことができるようになった。しかし実際に電力会社が市場に自由に参加できるようになるには、2005年のドイツ連邦ネットエージェンシーの設置を待たなければならなかった。

電力会社を自由に選べることができるので、私は福島の原発事故後、再生可能エネルギー100%の電力会社であるリヒトブリック社に契約を変更した。当初契約していたヴァッテンファル社(エネルギー源:再生可能エネルギー35.2%、化石燃料59.7%、原子力5.1%)よりもやや電気代は高くなったが、再生可能エネルギー100%を優先した選択だった。この事情については、「携帯の会社を選ぶように、電力会社を選ぶ」という記事に書いた。

2012年、リヒトブリック社から「電気代は値上げをしない」とういうメールが届いた。2012年と言えば、再生可能エネルギーを優先的に買い取るための賦課金の上昇で、ドイツの電気代の値上がりが問題となり始めた年である。日本の一部大手メディアはこの状況を、「電気代高騰がドイツの脱原発を遅らせる」だの「エネルギー転換に暗雲が立ち込める」だのと書きたてた。しかし、少なくともリヒトブリック社は値上げをしなかったので、私自身は電力値上げを実感することはなく2012年は過ぎた。

そして、今年の12月12日、リヒトブリック社からメールが届いた。ひょっとして、今度こそ値上げのお知らせかと思ったところ、まずメールの表題に「私たちからクリスマスプレゼント:リヒトブリックはエコ電力を値下げ」というものだった。思わずニコッとしながらメール本文を読んだ。「リヒトブリック社のお客様に早目のクリスマスプレゼントをお届けします。0.72(約1円)セント値下げします。その結果1キロワット時の電気代が26.76セント(約38円27銭)になります。ただし基本料は今まで通り、1ヶ月8ユーロ95セント(約127円98セント)です」と書かれていた。さらに次のように書いてあった。

「お客様は不思議に思われたことでしょう。というのも、高くつくエネルギー転換と至る所で言われているからです。事実、再生可能エネルギー賦課金は新年からまた上がります。多くの電力会社が値上げを告知しています。しかし、これは事実の一部に過ぎません。風力パーク、太陽光発電施設はドイツでの電力供給量を高めています。その結果リヒトブリック社はより安価にエコ電力を購入できるのです。そして私たちはこの利益をお客様に還元することを当然と考えています。再生可能エネルギー賦課金を相殺する以上に、電気代を値下げすることができました。これは嬉しい展開です。エネルギー転換は着々と実を結んでいます。そしてお客様にとってもお得な結果になります」と。

再生可能エネルギー賦課金の変遷

再生可能エネルギー賦課金の変遷

再生可能エネルギー賦課金は2014年、今年に比べ約1ユーロセント上昇している。しかし、リヒトブリック社は生産量が増えている再生可能エネルギーをより安価に購入することで2014年4月から電気代の値下げを実行する。

電気代の高騰が話題になるたびに、ドイツの消費者センターは電力会社の価格を比較して、より安価な電力会社への変更を推奨している。原発の電力を使わない、安価な電力会社を選べることは、ドイツならではのクリスマスプレゼントである。

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