プラスチック容器を使うくち、竹皮を使うくち?

やま / 2013年3月3日

寒い今の季節の魚、早速包丁でさばくと、内臓と一緒に出てきたのは、なんとプラスチック!プラスチックで海が汚染されているとは聞いたことはあるけれど、まさか付近で獲れた魚からとは……

最近このような経験をしたのは、イギリス、プリマス大学の生物学者でした。英国近海から釣った魚を調査した結果、504匹のうち3分の1以上の魚の内臓に粒状になったプラスチックが見つかったそうです。

メキシコの石油流出などは海洋環境災害はマスメディアに大きく取り上げられます。工業や原発による海洋汚染は大手企業の責任、または政府の不始末であり、結論として、消費者の生活習慣が原因ではあるとは考えないでしょう。

「長年放っておかれた大災害。海のプラスチック」「DDTやダイオキシン、PCBといった有害物質を引き寄せ、吸収する濃縮汚染粒子、海中のごみプラスチック」といった記事が消費者の関心を集めようとしています。

ところで誰がプラスチックを捨てているのでしょうか。出所は散在しています。国連の環境調査によると、海水中を浮遊するプラスチックの80%は陸から海に流されているそうです。風に吹き飛ばされたり、川に流れたり、あるいは違法の廃棄処分場から流出したりしています。プラスチックのゴミは、以前よりも海岸で目立つとはいえ、集めて片付けられると気になりません。しかし海上に漂流しているプラスチックは推測によると、全体のわずか15%で、波により海岸へ漂着する部分がさらに15%だそうです。そうであると、70%が見えない海中や海底に蓄積していることになります。

大量のロープ類とビニール袋で胃袋がいっぱいだった鯨、イルカ、ウミガメたち、ナイロンの網にからんで身動きできないアシカ、缶を束ねるリングが首に嵌ってしまい死を待つ鴨、餌と思ってプラスチックの断片を食べて飢え死にするアホウドリ。増える一方のプラスチックで、海がゴミで溢れて、生物がいなくなってしまうのはいつだろうかと考えていると「発泡スチロールの終わりを告げるニューヨーク」という記事が目に入りました。

魚、肉を始め何を買っても、パッケージ容器としてついて来るのが発泡スチロールです。ニューヨークでは特に「テイクアウト」と呼ばれる飲食物が発泡スチロールに入れられ、販売されています。店で買った「テイクアウト」を直接持ち出して公園で食べます。時間がないニューヨーカーは食べ切れなかった残りを発泡スチロールの容器とともに、きちんとゴミ箱へ捨て、急いで仕事に戻ります。「ここから問題が始まります」と述べるのはニューヨーク市議会のスポークスウーマンであるクリスティン・クウィンさんです。「あちこち探さなくても、まとまった所に大量の餌が置いてあるので、ドブネズミは大喜びです。プラスチックと同様、この害獣はいつまでも生き残るようです。アブラムシよりも始末が悪く、いずれも処分が大変です」。人口820万のニューヨーク市から出るゴミは毎年約120万トン。発泡スチロールのゴミだけで2万トンだそうです。発泡スチロールの密度が20~60kg/m³ですから2万トンとなると相当なゴミの山です。レストランだけではなくセントラルパークでの禁煙や、特大サイズの清涼飲料水販売規制を実現させて“ナニー”(子どもの世話や教育をする人物)とあだ名をつけられたのはブルームバーグ市長です。彼は、今年度、任期が終わる前に発泡スチロール容器を禁止する方針を明らかにしました。

毎年何百万トンも捨てられているプラスチックが一旦海中に沈んでしまうと取り出すのは不可能だと言われています。「漁船が漁に出るかわりに海中のプラスチックを集めているところもありますが、それでは遅いのです。これからは陸上でプラスチックのゴミが出ないようにすることが重要です。これは、誰にでもすぐに実行できます」とドイツ自然保護連盟のキム・デトロフさんはあるインタビューに答えていました。

「我々はこのような屑がなくても生活できる。ひょっとしたら、このガラクタがなければ今よりもっと長生きできるかもしれない」と市の現状に対してブルームバーグ市長はこのように語っていました。さめないようにとふた付きの発泡スチロールに入ったハンバーガーの味は、企業が決めた人工の風味です。無臭の容器に入った人工添加物により、ますます消費者の舌と鼻の感覚が鈍く、乏しくなっていくと聞きました。このような「屑」がなかったころ、日本にはどこでも竹の皮というすばらしい天然パッケージ材がありました。ごちそうとなるとすき焼きですが、その高価な肉の入った容器もそういえば竹の皮でした。

山口昌伴著の『ちょっと昔の道具から見なおす住まい方』から引用

私は竹の皮に包んだおむすび持って遠足に行った口である。さてお弁当のパッケージとなり、膝の上の皿となる……そして竹の皮には殺菌力、今にいう抗菌作用があって、食品の携帯によろしい。……竹の皮の背面はビロード状に毛がびっしり。薄茶色に濃い焦げ茶の鹿の子まだらとよばれるパターンの斑が入っている。京の都ふうの小味なデザインといってよい。内面は半透明に近い極薄の艶々した膜が多量にラミナートしてある。この膜は防水、耐水性がありながらすべすべした平滑面であり顕微鏡レベルで凹凸があって飯粒離れがよく、海苔離れがよい。しかも通気性があって蒸れない。結露の水滴が溜まらず、汗をかかないので、ほかほかのおむすびを包んでも海苔も溶けない。
一本の竹が脱ぐ竹皮は50~70枚。筍の旬のあと、全国でみれば10億枚の桁で竹皮は落ちてくる。
先述した高性能秘術を尽くした自然のデザイン製品に敬意を表すまなざしが、これからは大事なのではないだろうか。

採りたての竹の皮に梅干を包み少しずつなめたおやつを思い出します。あの初夏の香りはまだ忘れられません。これからますます高くなり環境問題となる石油です。これを原料としているプラスチックと比べて、竹の皮は実に経済的でグッドデザインです。

石油精製の写真はflickr.com / by Juergen Uch

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