再生可能エネルギーの賦課金に関するウソ!?

あきこ / 2012年10月28日

記事「ドイツ風電気料金高騰への対処」で、再生可能エネルギーの賦課金が来年は約50%上がり、電気代が高騰することを書いた。10月15日、正式に2013年の賦課金が発表され、現行の1kWh当り3.59ユーロセントから5.28ユーロセントに引き上げられた。上げ幅は予想通り50%弱で、再生可能エネルギー優先法賦課金(EEG-Umlage)に対する批判の声が上がっていることも、このサイトで記されている。ところがどっこい、EEG-Umlage(再生可能エネルギー賦課金)をもじってEEG-Umlüge(「再生可能エネルギー法賦課金をめぐる嘘」とでも訳せばよいだろうか)を掲げたデモが、2013年の賦課金値上げの正式発表を目前に控えた10月13日、連邦首相官邸前で行われた。ドイツ全国風力エネルギー連盟(Bundesverband WindEnergie)が主催したデモである。

この日、ベルリンは雲ひとつない秋晴れ、気温も上がり、秋休み中の土曜日ということで、連邦議会前の広場は、多くの観光客がいた。これらの観光客を尻目に、首相官邸横の道路に、巨大な風力発電の回転翼を積んだトラックが横たわり、その前に色とりどりの風船や、思い思いの主張を書いたプラカードや横断幕を掲げた人が集まっていた。多くの人が、「脱原発を支えるのは私たち」と書いたT シャツを着ている。テントも立ち並び、飲み物と軽食も用意されており、市民団体のデモとは様子が違う。テント内の主催者に写真撮影をしてもよいかどうか尋ねたら、「大歓迎!」と言われ、Tシャツ、「脱原発を支えるのは私たち」と印刷されたシール、さらには分厚い資料まで手渡された。以下、デモの前に行われた演説で、特に印象に残った部分を中心に報告する。

集会が始まり、司会者がトラックに積まれた回転翼について説明した。長さ45メートル、重さ9トンの回転翼は、条件の良い場所に設置されれば、年間500万kWhの電力を生産、すなわち約1500世帯の電力を賄えると説明した。この20年の間に、風力エネルギーに関する技術は格段に向上したということであった。デモのためにドイツ各地から集まってきた風力エネルギー関連企業や団体が紹介された後、全国風力エネルギー連盟会長ヘルマン・アルバース氏が回転翼を載せたトラックの荷台に乗り、「ドイツは脱原発が必要だ。この事実はもはや動かせない」という第一声でスピーチを始めた。風力エネルギーをはじめとする再生可能な自然エネルギーは雇用の創出という点からもドイツの経済にとって大きなチャンスであること、再生可能エネルギーによってCO排出の削減が進むこと、さらに従来の化石燃料の高騰こそが電気料金を引き上げているのであり、高騰を再生可能エネルギーのせいにするのは間違っていると語ると、参加者からは笛や拍手や足踏みでの同意が表明される。アルバース会長のスピーチはますます熱気を帯び、核心へと迫った。「再生可能エネルギーの賦課金を言うなら、なぜ石油、ガス、原子力の賦課金も言わないのか、電気料金の中に含まれているゴアレーベンやアッセの核廃棄物処理場に関する負担金は明細が明らかにされず、再生可能エネルギーだけが電気料金高騰の非難を受けなければならないのか」とマイクを握り締め、首相官邸に向かって声を張り上げれば、参加者も鳴り物で応援する。「再生可能エネルギーの割合を今の25%から75%増やし、再生可能エネルギーによる電力生産を100%にして、ドイツは世界に模範を示そう。ユーロ危機にあえぐ国々に対して援助を垂れ流しする前に、ドイツ国内のクリーンなエネルギー生産の技術を高めることこそドイツ経済の安定的発展につながる。それは過去20年間の風力発電が電力生産だけではなく、雇用も創出してきたことを見れば明らかだ」と。

アルバース会長に続いて、エネルギー消費者連盟(Bund der Energieverbraucher e.V.)のアリベルト・ペータース会長がトラックの荷台に上った。まず、再生可能エネルギー法は、ドイツの数ある法律の中で、最も優れた世界に誇れる法律であるという前置き(大きな拍手)のあと、ペータース会長は再生可能エネルギーの賦課金の理不尽な免除が個人消費者の負担になっているという点を厳しく批判した。さらに、「電力企業は、送電網の建設が進まないのは環境団体が自然破壊を理由に反対しているというが、それは正しくない。ドイツの環境保護団体であるドイツ環境自然保護同盟(BUND、Bund für Umwelt und Naturschutz)もドイツ自然保護連盟(NABU、Naturschutzbund Deutschland e.V.)も、再生可能エネルギーを送るための送電網建設には反対しないことを表明している」と述べた。さらに委員長は、「政府は、社会的弱者が電気料金を払えないという事態が生じないような対策を講じなければならない」と首相官邸に向けてアピールした。

電気を生産する側(風力エネルギー連盟)と電気を消費する側(エネルギー消費者連盟)を代表する2人のスピーチからごく一部を紹介したが、それぞれの話には説得力があった。連邦経済相などが主張する再生可能エネルギー法の改正や廃止ではなく、賦課金の公平な分担と石炭や原子力による発電への公的補助金を消費者に明確にすることの重要性が伝わってきた。

参加者が掲げるプラカードには、「アルトマイヤーは福島を忘れたのか」、「再生可能エネルギー法こそ脱原発の土台」、「電力企業は石炭と原子力への隠された公的補助で莫大な利益享受」、「送電網の地域分散化」など、再生可能エネルギーへの参加者の思いが溢れていた。「未来は再生可能エネルギー」というプラカードを掲げた子ども連れの参加者も多かった。

秋晴れの土曜日、巨大な回転翼をベルリンまで輸送できるかどうか、最後まで見通しがつかず、デモの告知が遅れたと主催者は言っていたが、ドイツ各地からの参加者で連邦首相官邸横の広場は再生可能エネルギー法を守ろうという熱気で盛り上がった。

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