2度目の脱原発 - ドイツの電力会社の決断

あきこ / 2012年6月24日

6月18日付の南ドイツ新聞の経済面に「2度目の脱原発」という見出しが書かれていた。2度目というのはどういうことかと疑問に思いながら読むと、ドイツの大手エネルギー企業であるRWE社が、ドイツ国内に次いで、外国での原発事業から撤退するという内容だった。そして6月18日付のオンライン版シュピーゲルも「方針転換」という見出しで、RWE社が原発事業から撤退することを報じていた。これらの報道の内容と、これに対する反原発運動団体の反応を紹介しよう。

まず、オンライン版シュピーゲルのニュースの抄訳である。

7月からRWE社の新しい最高責任者に就任するペーター・テリウム氏は、就任を2週間後に控えた時点で、財政上のリスクを負うことはできないという理由から、「わが社は新しい原子力発電所には投資しない」と明言した。前任のユルゲン・グロスマン氏は強力に原子力発電を推進したため、「ミスター・ブーマン」と言われるほど、環境保護団体や数多くの政治家からブーイングを受けていた。同氏は、地震の危険があると批判されていたブルガリア北部ベレネでの原発建設にも積極的であったが、新体制のもとでは、ベレネと同じように、ルーマニアに新しく原子力発電所を建設する計画も白紙にする。また、オランダでの新規原発建設事業からも撤退することが発表された。テリウム氏は、就任に当たって前任者とは異なる路線を進むことを明らかにしたものの、ドイツ国内の原発の稼働を2022年まで継続すること、脱原発を決定した連邦政府に対する賠償請求については継続すると発表した。

テリウム氏指揮下のRWE社は、今後太陽光発電に重点を置いて、スペイン、イタリア、北アフリカでの発電を視野に入れているという。同社のエコ発電は、今までは風力が主であったが、ここでも新体制下での方針転換が見られる。テリウム氏は、前任の原発推進者グロスマン氏のイメージから距離を置こうとしている。

南ドイツ新聞も、「2度目の脱原発」という見出しで、RWE社がドイツでの脱原発に次いで、国際的にも原子力エネルギーから決別すると報じている。同紙によると、RWEのライバルで、ドイツ最大の電力会社E.onでも原発事業への不信が高まっているという。以下、その内容を手短にまとめる。

6月15日と16日の両日、ボスポラス海峡を見下ろすドイツから遠く離れたイスタンブールのホテルで同社の幹部会が開かれた。この会合で、7月に最高責任者に就任するテリウム氏が世界における原子力発電所の新規建設から手を引き、ドイツおよび世界でも太陽光発電に今まで以上に力を入れることを発表した。この決定によって、それまで原子力エネルギーを推進してきた同社が新しい方向へ転換することになる。この結果、「雨が多いドイツで太陽光による電力生産を行うのは、アラスカでパイナップルを栽培するようなものだ」と苦言を呈していた前任者、グロスマン氏の路線に終止符が打たれることになった。

ライバルのE.on社は、ドイツでの脱原発決定後の2011年からフィンランド北東部ピュヘヨキでの原子力発電所建設に参加している。しかし、同社の監査役会にはこの建設プロジェクトに反対する声が上がっているという。

さて、RWE社の方針転換が報道された直後、ドイツの反原発運動団体の「アウスゲシュトラールト」は早速以下のような声明を発表した。

RWE社はドイツ国内の脱原発を果たすべきだ。RWE社は格付け機関の圧力で、原子力発電所の新規建設が予測不可能なリスクがあることを認めた。しかし、RWE社がドイツ国内での原子力政策を変更しないかぎり、我々は今回の同社の方針転換を喜ぶことはできない。同社は、2021年までグントレミンゲンで福島と同じタイプの原子炉を稼動させようとしている。さらに、(オランダとの国境にある)リンゲンの原子炉は飛行機の墜落に対する安全対策が講じられていないにもかかわらず、2022年まで稼動を続けようとしている。我々は、RWE社がこれらの危険な原子炉を今すぐ停止することを求める。また、RWE社が関与し、世界の35の原子力発電所に燃料を提供しているヴェストファーレンのグローナウウラン増殖炉の停止を求める。ヘッセン州のビブリス原子力発電所の停止に対して、RWE社が賠償を求めているが、この告訴の取り下げを求める。

外国における原発投資撤回というRWE社の決定は歓迎するが、同社はドイツ最大の核のゴミ生産者の一つであり、石炭による火力発電によって気候変動にも加担している。真の方針転換には、太陽光発電の生産を発表する以上のことが必要とされている。

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