原子力、断トツで一位に選ばれる

やま / 2012年4月29日

ドイツのマスメディアでは原子力について人々がどのように考えているかが、よく報道されています。今回、ドライ・ザット(3Sat、ドイツ・オーストリア・スイス協同テレビ局)が「科学ショー」という番組のために行ったアンケートに参加した視聴者の答えは明白でした。

今月の「科学ショー」は失敗に終わった技術革新は何かを問う番組でした。2月から一ヶ月の間、テレビ局が挙げた20の項目から視聴者は一つを選ぶことができ、5000人以上が参加したアンケートの結果は次のようになりました。

1

原子力

2

夏時間

3

バイオ燃料

4

省エネ電球

5

落ち葉吹き機

6

豊胸バッグ

7

ペーパーレス・オフィス

8

アスベスト

9

グリューナ・プンクト

10

発砲スチロール断熱層

11

ビニール袋

12

フルボディースキャン

13

カーゴリフター(飛行船を用いた貨物輸送システム)

14

水陸両用自動車

15

トルコレクト(ETC、輸送車料金徴収システム)

16

磁気浮上式鉄道

17

コンコルド

18

ガリレオ(欧州の衛星ナビシステム)

19

テレビ電話

20

ロボット

 

番組の司会者であるゲアト・スコーベル氏(Gert Scobel)と彼のチームは「現代社会は科学の進歩についてどのように考えているか」と問いかけ、放映時間は約1時間のたいへ参考になる番組でした。20位からそれぞれの項目についての説明と、何人かのゲストの解説が入り、最後にワーストワンが告げられました。投票者の半数が原子力を選んだことにはスコーベル氏にも意外だったそうです。
一般に科学の進歩は善とされています。20世紀の科学技術から生まれた携帯電話とインターネット、ペースメーカーとCTスキャン、ABS(アンチロックブレーキシステム)とエアバッグなど、これらの便利な技術なしの社会は、今では想像できないでしょう。「もちろん今まで、技術者や専門家たちはすばらしいものを作り出した。しかし、進歩的である、便利であるだけでよいのだろうか。薬の場合のように問題は副作用。これから私たちは、思慮深い進歩を選択するチャンスがある」そう語るスコーベル氏。原子力の場合、“副作用”は放射性廃棄物でしょう。この危険な“副作用”の事実につい口を閉ざすのは作る側の常のようですが。

以下、いくつかの「失敗リスト」に挙げられた項目をまとめてみました。

省エネ電球(4位):電球形蛍光灯である省エネ電球は白熱電球よりも同じ明るさで80パーセントの節電になります。EUは白熱電球を市場から排除することを決めました。省エネ電球に使われている水銀の害は、省エネのために無視されました。水銀がもれた場合、危険に対する警告はなされていません。

落ち葉吹き機(5位):箒で落ち葉を掃き集める代わりに、風力で落ち葉を吹き集めます。燃料であるガソリンのにおいに加えてすごい騒音がします。

グリューナ・プンクト(9位):20年ほど前に導入された、リサイクル可能なパッケージだけを収集するシステム。緑のマークがついたパッケージを黄色いビニール袋に入れ、あとでリサイクルするというのがこのシステムですが、40パーセント以上のゴミは間違いゴミ。結局50パーセントがリサイクルされずに燃やされるそうです。緑のマークのついた製品にはリサイクルのための費用が加算されています。製品の価格に上乗せされていて、消費者の負担になっています。

発砲スチロール断熱層(10位):省エネ住宅には欠かせない外壁断熱層ですが、寿命が30年で、処理の問題がまだ解決されていません。建材費としては今は安いのですが、原料である石油や化学物資を環境に害のないように処理するのは複雑で、コストも高くつきます。環境保護を考えると他の製品や省エネ方法を選ぶべきです。

ビニール袋(11位):ビニール袋が使用される時間は平均わずか25分ですが、自然や動物が受ける被害は数百年と見積もられています。 http://www.plastic-planet.de/ (関連記事、プラスチック・プラネット、ゴミの話

2 Responses to 原子力、断トツで一位に選ばれる

  1. みづき says:

    ETCは日本では普及していて受け入れられているように
    思いますが、ドイツでは失敗だと思われているんですね。

    ロボットは、産業用ロボットなどで成功例は結構あるんじゃ
    ないでしょうか。
    ただ、一般人がロボット利用の現場を見る機会がないので
    失敗だと思われてるのかな。

    • やま says:

      ヨーロッパの中では一般にドイツ人は懐疑的だと言われています。便利だからすぐに取り入れる前に、利点、欠点な解析や討論が長く続き開発が遅いとも言われています。