メルケル首相に批判殺到

こちゃん / 2012年3月18日

3月11日の東日本大震災一周年を機に、ここ数日間、昨年3月以降、脱原発・エネルギー転換政策を決定したアンゲラ・メルケル独首相に、その進展具合を批判する政治家や経済界代表、メディアからの発言が相次いだ。一年前にエネルギ−転換を「革命」と称したのはノルベルト・レットゲン連邦環境相、「多大の労力を要するヘラクレスの大仕事」としたのは他ならぬメルケル首相。それなのに立法・行政面での進歩は一向に目に見えて来ておらず、一部投資などは足踏みしている。背景にはエネルギー転換が果たして成功するのだろうかとの心配もあるようだ。

メルケル首相は恒例の今週末のビデオメッセージでも、政府のエネルギー転換政策を正当化し、ドイツは再生可能エネルギーで世界の先端を行くことになるだろうと強調した。しかし野党である緑の党の元連邦環境相ユルゲン・トゥリティン連邦議員団長は、首相は進展の道を塞いでいると批判する。再生可能エネルギーの促進、エネルギー効率の向上、エネルギーの節減、いずれの分野でも進歩は見られないと語る。

例えば、連邦環境相はソーラー発電の助成を制限することに反対だ。一方、連邦経済相はこれ以上の支援は電力価格の高騰に繋がり企業の競争力を落とすから助成金を出来る限り減らしたいとする。両者は長い間言い争っていたが、このたび得られた妥協案では、助成金が大幅に削減されることになる。最も大量のエネルギー節減が可能だとされる建物の断熱工事に関しては、当てにしていた資金(二酸化炭素排気権取引による利益)が充分に集まらないことが理由で15億ユーロの補助金が出るのか出ないのか、つい先頃まで決定していなかった。工事費の所得税からの控除は、税収入の減る州政府が反対しているため、未だ決まっていない。トゥリティン連邦議員団長によると、ドイツ政府は、欧州連合が現在設定しようとしている(電機製品などの)エネルギー効率目標値が拘束力を持つことを拒もうとしている。

ドイツ連邦政府の諮問機関「エネルギーの安全供給に関する倫理委員会」の共同委員長の一人で国連環境計画の事務局長を長年務めたクラウス・テップファー元連邦環境相(メルケル首相と同じキリスト教民主同盟所属)は、首相の政治を「政府が今までにしてきたことは充分ではない。重点と一貫性が欠如している」と批判している。同氏は太陽光発電の助成金削減にも反対だ。同委員会のもう一人の委員長だったドイツ研究振興協会のマティアス・クライナー会長は「エネルギー転換は自然に起こるものではない。厳格なプロジェクトマネージメントとモニタリングが必要だ」と発言している。

ハノーバー市長で、地方自治体所有の中小規模発電所などが所属する公営企業連盟の会長であるシュテファン・ウ゛ァイル氏(最大野党の社会民主党所属)は、「各地域の消費者に電力を送る配電網は総電力網の97%を占めているのに、政治家とドイツ連邦ネット・エージェンシーはその重要性を無視している」と批判。特に分散型の再生可能エネルギー発電では、配電網の欠如、欠陥がボトルネックになると指摘する。そしてインテリジェントな電力網も必要だと強調する。「そもそも、メルケル首相もエネルギー転換に際し、最も重要なのは電力網だと語っていた。その電力網の設置計画、建設許可、運営管理の権限が、中央政府ではなく下級の官庁であるネット・エージェンシーにあるのは間違いだ」と話す。「どの役所でも、それぞれが漫然と時をすごしている」と批判するのは緑の党のライナー・バーケ元連邦環境省事務次官。

独4大送電網運営会社の一つであるテネットは、「北海沖の洋上風力発電パークの電力網への接続には資金も人材も資材も欠ける」という警告の手紙を政府に送った。ドイツ・フィリップス、ボッシュ=シーメンス、シュティーベル・エルトロンなどドイツの電機企業からの「思い切った、力強い政治的指導力」を求める声もある。「トップとなる人物が必要だ」とするのはドイツ産業連盟のハンス=ペーター・カイテル会長。同氏は連邦エネルギー大臣の創設を求めている。

ベルリンの日刊紙「ターゲスシュピーゲル(Der Tagesspiegel)」は、「メルケル首相はエネルギー転換に確信をもっているのだろうか。決定は、やはり(決定当時目前に迫っていた)州選挙で負けないための工作だったのだろうか」と問う。そして、「次期、或は次々期政権がエネルギー転換の速度を弱めるか、またはエネルギー政策を元に戻すとでも考えているのだろうか」と厳しく質問する。「エネルギー転換のためには、資金、コンセプト、高度のマネージメントが欠かせない。エネルギー転換というこの大事業に必要なのは、首相に直属する担当全権委員 だ」と結ぶ。