ドイツの隣国3国で起きていること

あきこ / 2012年1月15日

福島の原発事故に対して、ドイツはヨーロッパ諸国の中で最も過激かつ過敏に反応したと言えるだろう。この事情に関しては、私たちのサイトでも何度か触れられている。ところでヨーロッパ諸国のエネルギー政策は、福島の影響を受けたのだろうか。

「西風への不安 - オランダで新たな原子力発電所の建設計画」

ベネルクス3国に隣接するアーヘン市の日刊紙「アーヘナー・ツァイトゥング(Aachener Zeitung)」(1月6日)および「シュピーゲル・オンライン(Spiegel-Online)」(1月10日)より

ドイツの国境からわずか180キロメートルしか離れていないオランダ、ボルセレ市に同国2基目の原発が新設されるという。この計画が実施されれば、西風に乗って放射性物資がドイツに降下する恐れがある。欧州連合の法律では、隣接諸国も原発の新設について意見表明ができることになっているため、オランダに隣接する各自治体の住民たちは、1月12日までにボルセレ市あるいはオランダ経済省に書面で反対の意思表示を行うことができる。住民たちの強い要請によって、ノルトライン=ヴェストファーレン州政府も公式にオランダ政府に新設反対を申し入れた。今後の動向が注目されるところであるが、現時点ではこの計画は暗礁に乗り上げている。これはドイツの反対運動の成果というよりは、投資家たちにとって原発の魅力が極端に低下したためだ。ドイツ第二の電力会社であるRWE社も、この新設への投資を拒否している。同原発の主要企業であるデルタ社は、オランダ政府に財政支援を要請しているが、マルク・ルッテ首相は、建設そのものに反対はしないものの、国家の財政支援については強く否定している。

 

「風力エネルギーの拡充計画 - フランスの脱原発」

シュピーゲル・オンライン(1月11日)より

原発大国フランスは、今後、大幅に風力エネルギーに転換する計画のようだ。「ドイツ・ファイナンシャル・タイムズ」によると、ノルマンディーからブルターニュの沿岸部に5つの大規模オフショア・ウィンドファームの設立が計画されている。投資総額は百億ユーロ(約1兆円)に上る。2016年までにオフショアの風車を設置し、3ギガワットの電力を生産するという。フランスはこのプロジェクトで、今まで大幅に遅れを取っていた風力エネルギーの分野でドイツとイギリスに追いつくつもりだ。2020年までには生産量を倍増して、6ギガワットの生産を目指している。
最初のオフショア・プロジェクトで、パリは原子力への依存度を徐々に減少できるだろう。フランスの原子力安全委員会が原発の安全維持のために最高500億ユーロ(約5兆円)に上る経費が必要であるという報告書を提出したため、風力エネルギー推進は今後さらに加速するだろう。

 

「ポーランドの原子力草案 - 計画に重大な誤り」

「ターゲスシュピーゲル (Der Tagesspiegel)」 (2011年11月29日)より

ベルリンからわずか150キロメートル離れたポーランド西端のグリフィノ(ドイツ名はグライフェンハーゲン)が、ポーランドにおける最初の原子力発電所の建設予定地の候補の一つに挙げられていたが、28の候補地のうち、現時点ではグダンスク(ドイツ名はダンツィヒ)近郊のチャルノヴィエツ(Zarnowiec)が最有力となっている。因みに、ジャルノヴィーツでは1972年に当時のポーランド政府による原子炉建設プロジェクトが開始され、同国最初の原子炉発電所になるはずだったが、チェルノブイリ事故のあと、この事業に対する反対運動が展開され、安全性に不足があることが指摘されたため、政府は1989年に建設プロジェクトをストップした経緯がある。
現ポーランド政府のこの計画に対し、ベルリン州およびブランデンブルク州が共同で原子力発電所計画の撤回を求めようとしている。緑の党の鑑定によると、ポーランドの計画案は福島の事故を全く考慮に入れず、原発によるリスクが過小評価され、逆に風力エネルギーが健康に害を与えることを指摘しているという。ベルリン州政府も、ポーランド側の原子力発電所と再生可能エネルギーについての比較が「全く的を得ていない」と指摘している。

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