肉のはなし

さざえ / 2011年10月1日

ドイツ人の食肉需要のすごさは、とてもハンパなものではありません。スーパー、肉屋の店頭、レストランなどで目にすると、彼らはつくづく肉食人種なんだという認識が強まります。われわれ日本人にはご飯などの炭水化物が主食で、おかずはその三分の一ぐらいの量の肉や魚、もしくは野菜。昔は十分の一ぐらいではなかったかと思います。そう言えば、日の丸弁当というものもありました。

一般ドイツ人のテーブルでは、日本式の主食対おかずの関係が逆となり、主食=肉類が幅を利かせ、おかず=じゃがいも、米、麺類が三分の一ほど、それに野菜がお飾りという形です。

しかし、昔のドイツやヨーロッパでは、裕福な層はともかく、一般の食卓に肉がのぼるのはごくまれで、週に一回肉がいただけたら、オンの字だったそうです。そのせいか、第二次世界大戦の敗戦国ドイツは、食肉産業保護に力を入れるようになりました。

その結果、政府助成金の額が年々大きくなると同時に、巨大な食肉企業に成長した酪農家も多く、次第に利益団体として、政府の政策に口を出すようになりました。

因みに食肉用家畜の飼料費として、2008年と2009年には、それぞれ9億5千万ユーロ、約1兆円もの助成金が欧州連合(EU)から支払われました。ドイツで十指に数えられる巨大食肉企業には、ドイツ連邦政府から年間約20億円の助成金が下りているそうです。輸出補助金という名目で。(ベルリンの日刊紙「ベルリーナ・ツァイトゥング」)

ここで、なぜ輸出補助金となるのでしょうか。同紙によれば、ドイツ市場には牛、豚、鶏などの食肉が大量に余っています。その余剰品が他国への輸出製品となるわけです。そして、このドイツもしくはEUからの余剰肉が冷凍肉となって、どのくらいアフリカなどの農民を貧困に追いやっていることでしょうか(税金を使っているのですから、現地の肉より安いのです)。この事実を私はテレビのドキュメンタリーで知り、怒りを覚えました。助成金の不平等な分配はドイツ国内にもおよび、2008年には中小酪農家の17%が廃業に追いやられたそうです。

同紙に、民間団体のドイツ環境自然保護同盟BUND(Bund für Umwelt und Naturschutz)は巨大食肉企業へのEU助成金の打ち切りを要求した、と載っていました。

One Response to 肉のはなし

  1. みづき says:

    ドイツ人の肉消費量は、ほんとに多いですよね。
    一方で、ベジタリアンの人も結構な比率で、彼らを食事に招くと、
    いつもメニューに悩みます。
    日本人感覚だと、お客さんに食べさせる「ごちそう」と言うと、
    どうしてもお肉を含むメニューが多いので。
    「ひとにごちそうになるときくらい、ベジタリアンの鉄則を
    緩めてくれてもいいのにな…」などと感じるのは、事なかれ主義な
    日本人だからなのかな…。

    「肉大量消費派 vs ベジタリアン」の二項対立ではなく、
    「穀物や野菜が主で、ちょっとだけお肉」の日本流の中庸が
    いいのでは…と思ってしまうのは、やっぱり私が
    日本人だからでしょうか!?(笑)