外国記者協会に登録

あきこ / 2011年10月1日

日本では福島の原発事故以後、とくに記者クラブを中心とする大手メディアの報道のあり方についての議論が活発になっています。これをきっかけに、ドイツにおける報道のあり方に興味を持ち始めました。

ドイツで長くジャーナリストとして活躍している「先輩魔女」から教えてもらい、ベルリンにある「海外特派員協会VAP(Verein der ausländischen Presse)」(「海外特派員協会」という名称には違和感を覚えますが、事務局入口に日本語でこう書かれた看板が掲示されています。「外国記者協会」のほうが適切だと思いますので、ここでは外国記者協会という表現を用います)のサイトを覗いてみました。入会申請のページがあり、会員になるための手続きが記されています。その条件を読むと、海外の報道機関に所属するジャーナリスト、あるいはフリーの立場で外国のメディアのために記事を書くジャーナリストとなっていますが、会の規約にはさらに詳しく、「ドイツ在住で、記事を書く記者だけではなく、テレビ・ラジオ局で働く人、通信社の仕事をする人、それにカメラマンもメンバーになれる」と記されています。会員としての承認は、理事会が決定すると書かれています。入会申請書に、以下の3点を提出することが求められています。

①パスポート用写真2枚
②記者証(たとえば連邦情報庁の登録証など)もしくは自分が書いた記事のコピーを添付
③ドイツにおける特派員としての確認書(例えば、日本のメディアからの取材依頼書)

このサイトを見て、入会を申請してみることにしました。今までに日本の雑誌に書いた記事をコピーし、某新聞社から頂戴した取材依頼書を添え、申請書に必要事項を記入した上で、写真2枚を持って外国記者協会の事務所に行ったのが7月のことでした。すると、事務局の担当者から即座に入会の許諾を得ました。理事会の審査があると思っていたので、この即答にはやや驚きました。正式な許可は8月下旬に開かれる理事会の後になるが、もうどの記者会見に出ても良いということでした。また連邦記者会(Bundespressekonferenz)主催の記者会見にも、外国記者協会の会員は自動的に参加が許可されるということでした。

外国記者クラブの事務局の女性から、ドイツの外国記者協会は他の国々とは異なった独特の存在であることを聞かされました。また長くこの協会の会員をしている先輩魔女からも指摘を受けたので、外国記者協会について簡単にまとめてみます。

外国記者協会は1906年6月30日にベルリンで誕生しました。100年を超える歴史を持つこの協会の会員たちが、20世紀のドイツの歴史をつぶさに経験し、書き連ねてきたことになります。ナチスの時代には、ゲッベルス率いる宣伝省による多くの嫌がらせにもかかわらず、1942年の全面戦争公示まで、協会は独自性を保ち続けました。1945年から51年までの小休止を経て、外国記者協会は第二次大戦後、ボンとベルリンでの活動を再開しました。ドイツ分断によって、二つの都市に協会ができたことになります。ベルリンの協会には、西ベルリンだけではなく、東ベルリンに事務所を置く主に東欧のメディアの記者たちも参加していました。東西ドイツの統一後、1999年、ボンからベルリンへの政府移転に伴い、両都市にあった外国記者協会も統一され、ベルリンを拠点とするようになりました。現在、外国記者協会には約60ヶ国から400名を超える会員が加入しています。インターネットという新たなメディアの時代にあって、これらの会員が発信する情報によって、外国におけるドイツへのイメージが形作られていきます。

連邦記者会についても、簡単に紹介しておきましょう。この記者会は1949年、コンラート・アデナウアーがドイツ連邦共和国の初代首相に選出された日に、新聞記者のグループが呼びかけたことで誕生しました。正式には1949年10月11日が設立の日となっています。帝国記者会がナチスの時代に政府の宣伝機関になってしまったことを繰り返さないという意志を持って、創設されました。その背景にはワイマール共和国の伝統があります。すなわち、第一次世界大戦の終わりまで、軍部が行っていた記者会見を、ワイマール共和国のジャーナリストたちが自らの手で行うようになったのです。この伝統に基づき、あくまでもジャーナリスト側が政府、経済界、文化人を招待して、記者会見を組織しているというのは、他の国には見られない記者制度です。当初は外国人特派員や記者も連邦記者会に属していましたが、1951年に外国記者協会が再開されたため、それぞれ別の組織となっています。

外国記者協会は、会費収入で事務局職員(1名)と協会主催の記者会見を行っています。外国記者協会にとって、何よりも大切なことは、ドイツについて自由で多角的、多層的な情報が発信されることで、この自由さを維持するために政府からの補助金はほとんどもらっていないとのことです。因みに、入会金は50ユーロ(約5300円)、年会費は210ユーロ(約22260円)となっています。

外国記者協会からは、ほぼ毎日、いろいろな記者会見やツアーの案内などが送られてきます。私が会員になる前のことはよくわかりませんが、自然エネルギーに関する案内がかなり頻繁に来ます。すべての会見やツアーに参加することはできませんが、できるだけ参加して、多様な情報を発信していきたいものです。

日本にいる海外のメディアの記者、フリージャーナリストの組織として、日本外国特派員協会があります。同協会のサイトも併せてご覧ください。

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