ドキュメンタリー映画「第4の革命」

あきこ / 2011年10月1日

福島の原発事故が起きた約2ヶ月後の5月初め、テレビ局のアルテ(Arte)で「第4の革命」という映画が放映されました。アルテについてはご存知の方も多いと思いますが、一言で紹介するなら、ドイツとフランスの共同出資による、文化番組を中心とするテレビ局です。

福島の事故について、メルトダウンしているというドイツと、メルトダウンはしていないという日本の報道の格差に戸惑い、何をどのように考えればよいのかわからない時期に、アルテが放映した「第4の革命」は再生可能エネルギーがもたらす未来の可能性を見せてくれました。

この映画が日本でも紹介されることを願っていましたが、つい最近、10月に東京ドイツ文化センターで上映されることを知りました。日本での配給会社も決まったそうで、いろいろな形で上映される機会があることでしょう。

この映画は、ドイツ社会民主党(SPD)の政治家であり、第二のノーベル賞とも言われるライト・ライブリフッド賞を受賞したドイツの政治家ヘルマン・シェアー(Herrmann Scheer、2010年10月没)が書いた「エネルギーの自立。再生可能エネルギーに向けての新しい政治(Energieautonomie. Eine neue Politik für erneuerbare Energien)」という本を土台にしています。この映画では、ヘルマン・シェアー自身が語り手として登場し、解説を加えています。ドイツをはじめ、デンマーク、マリ、スペイン、バングラデシュ、ブラジル、中国、アメリカなどで、再生可能エネルギーを実践している個人や企業を取り上げ、それらの活動が成果を上げている様子が描かれていきます。

それに対比する形で、国際エネルギー機関(IEA)の主任エコノミストであるファティ・ビロールが登場し、予測可能な期間内でのエネルギー転換は不可能であり、これからも高まるエネルギー需要に対して火力発電や原子力発電のような技術は引き続き必要であることを繰り返し主張します。二つの対立する立場を提示しながら、監督のカール・A・フェヒナーは、再生可能エネルギーによる「第4の革命」が実現するという希望を与えてくれます。

ドイツでは、劇映画であれドキュメンタリーであれ、映画振興財団などの公的助成による映画制作というのが一般的ですが、フェヒナー監督は個人や企業からの資金援助という方法を選び、150人を超える支援者たちから125万ユーロ(約1億3125万円)の支援を受け、4年の歳月をかけて完成にこぎつけました。「第4の革命」は2010年3月にドイツで封切られました。まさに福島の原発事故一年前のことでした。この種のドキュメンタリー作品として興行的にも大きな成功を収めました。成功の背後には支援者たちの熱い思いだけではなく、再生可能エネルギーに携わる人々の明るい未来への確信があるのではないでしょうか。この映画が日本でも多くの人に見られることを願っています。