我が家の屋根、 エネルギー供給源に変わる

やま / 2011年8月25日

ご存じと思いますが、太陽から地球への距離は約一億5千万キロメートルです。わずか1平方メートルの地表面積が、100 ワットの電球 6000個 分と同じ明るさ だと言われています。

私たちはこの巨大なエネルギーを、毎日どこでも受け取ることができます。この太陽熱を利用しようと、10年程前、我が家の屋根に 太陽熱を収集する装置を設置しました。

1936年に建てられた家に家族4人で住むようになってから18年。古い家がエコ住宅になるように、少しずつ改良を重ねています。大きくなった子どもたちにそれぞれ個室をと思い、屋根裏を改造し、もう一部屋作ることに決めました。

部屋が暗かったので、南に天窓を3枚入れました。今はアトリエとして使える程、家の中で一番 明るい部屋になりました。意外だったのは、ここがいつも暖かいんです。外の気温が10度、15度に下がっても、天気が良いと、日中は天窓から入る直射日光が部屋を暖めてくれるので、暖房がいりません。方角、大きさ、基準単位  等を考慮して計算してみると 3枚の天窓で収集できるエネルギーは暖房期間 約 500 kWh/a でした。正にローテクです。日差しの強い夏の日はブラインドを閉め、北側の窓を開け、風が通るようにしています。ですから冷房も必要ありません。

重要なのは断熱。せっかく 暖まった部屋のエネルギーが外に放出しないように、垂木と垂木の間に 12センチ 1)の断熱マットをしっかりと入れました。 冬の間、 暖房に 使うエネルギーが逃げないようにするには、もっともシンプルな方法で、コストはかかりません。

部屋の改造は、ちょっとした工事になってしまいました。どうせ職人が屋根にのぼって作業をするのなら、ついでにソーラー パネルも付けてもらおうと考えました。

すっきりとした赤い瓦の切妻屋根です。3枚の天窓と均整が取れるようにパネルを設置したいと考えました。パネルの大きさを調べた後、2列、各3枚、計6枚のパネルが適当だと決まりました。

専門店を探して、屋根を見にきてもらうことにしました。現場にやって来た技術担当者は、メモを取りました。

  • 屋根の傾斜は30度、角度 真南
  • 陰になりそうな木との間隔は十分
  • パネルと装置の置いてある地下室への配管には、使っていない煙突 2)が利用できる
  • 温水の量は部屋の面積と住民の人数で決まり、貯湯タンクは300リットル
  • 地下室には貯湯タンクを置く場所、高さも 十分あり

 

結果として給湯水を加熱するには、ソーラー コレクターが 2枚で間に合います。となると、残りのパネル 4枚は太陽光発電パネル。一般家庭向きの太陽光発電パネルはその当時、まだ新しいものでした。しかも 購入価格は温水を作るソーラーコレクターの2倍以上でした。6枚あると確かに屋根全体の形が整いますが、コストが高くつきすぎなのではないか、夜の長い冬には夜間は発電できないので、減価償却ができるのだろうか、などと迷っていると、ベルリン市の再生エネルギー利用促進政策があることを教えてもらいました。見積もりをとって、どのような援助を申請できるかなど調べてもらい、それから決めることにしました。

1ー2週間後に送られた見積もり 3)では ソーラーコレクターシステム (給湯水加熱) に14 000 マルク、太陽光発電パネルシステムに26 000マルク 、総額は 約 40 000 マルク でした。4)

いろいろ検討した後、私達の場合下記の補助金がもらえることがわかり、みどりのエネルギーに投資することに決めました。

  • 「10万棟 屋根計画」  100 000 Dächer  Programm

パネルで発電した電力の保証買取料金が1kWh 当たり 99 ペニヒ 5) この専門技師の計算ですと、4枚のパネルの発電量が約850kWh、設置後20年間、 毎年850 マルクの料金が戻ってくることになります。 何だか電力会社になった気分が してきました。

  •  IBB からの 奨励 6)

ベルリン投資銀行(Investitionsbank Berlin) というベルリン州中央促進機関から、ちょっとした補助金が 出るということがわかりました。その当時、東西統一の経済ブームが終息を迎え、特にベルリンの建設業は下火でした。この補助は再生エネルギーの促進だけではなく、 新たな雇用の創出を狙ったベルリン州政府の意図でした。

私たちの場合 太陽発電パネル 設置に約7 000マルク、 ソーラーコレクターに4 000マルク、全支出の 約4分の1 以上に当たる額が支給されました。

ソーラーパネルを設置して10年以上たった今、何も故障せず毎年、800-900 kWh、 太陽エネルギーを供給しています。給湯は食洗機、洗濯機 7)にも使えます。電気で水を暖めなくて済みます。今後、暖房温水加熱の可能なシステムに変えたいと思っています。

もちろん 屋根に太陽光発電パネルを付ければ、電力需要を100%カバーできるものでは ありません。生産に多量のエネルギーや資源を使う、ますます複雑になっている設備ばかりに頼ることはできません。エネルギーを使う量を減らすことも同じように大事だと思います。建物が必要とするエネルギーが減れば、供給しなければならない量も減ることになります。 まだまだ、やらなくてはいけない事はたくさんありますが、エネルギーの自給自足に一歩近づいたかなと思いました。

 

パネルで発電した直流電力を交流電力に効率よく変換してくれるSunny Boy
年に一度キロワット時を検針して電力会社にデータを送る。

 

1) 今、新築は20センチ以上が基準。(Energie Einsparungsverordnung EnEV) エネルギー節約規定がどんどん厳しくなっている。

 2) 燃料が石油ではなく石炭だった昔、換気と排気に各々煙突が必要だった。

 3)ソーラーコレクター、給湯水加熱

パネル 2枚   3,385.00
架設フレーム      845.00
貯湯タンク(ストレージタンク)   2,250.00
その他部品と架設工事   5,250.00

11,730.00
消費税

16%

  1,876.00

13 ,606.80 マルク

 

太陽光発電パネル

パネル 4枚  14,400.00
架設フレーム     1,728.00
交換装置     2,350.00
配線、コード、架設工事     2,880.00

 22,608.00
消費税

16%

   3,617.28

 26,225.28 マルク

 

4)参考   2000 年のドイツの一世帯の平均年収は約61 000マルク , 10年前 中古(1、 2 年)のベンツ ステーションワーゴンが 40 000 マルク

5) 参考  10年前は普通料金が1kWh 当たり 30 ペニヒ

 6) Richtlinien für die Gewährung von Zuwendungen zur Modernisierung und Instandsetzung von Wohnraum, zur Nutzung regenerativer Energiequellen sowie zur Qualifizierung und Beschäftigung(ModInstRL 99-stadtweit)vom 30.06.1999, veröffentlicht im Amtsblatt für Berlin NR. 45 vom 03.09.1999,という長い名前の基準法

7) ドイツでは一般に洗濯物を外で日に干さない。 その代わりに水道水を洗濯機内部で湯沸し洗濯する。

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